「安全校、ちゃんと受けてよ」と言いたくなったら――併願校リストをめぐる親子の温度差を縮める3つの視点
この記事は、「子供が安全校(滑り止め)を受けたがらない」「併願校リストを見て不安になる」と感じている、受験生の保護者の方へ向けたものです。志望校への思いと、現実的な合格の確保。そのあいだで親子の気持ちがすれ違いやすいこの時期に、家庭での話し合いを少しだけ楽にするための視点をお届けします。
夏が近づき、模試の判定や併願校の話題が家庭に出始める頃。「ここも受けておいたら?」と提案した安全校に、お子さんが乗り気でない。そんな場面に戸惑う親御さんは、決して少なくありません。「なぜ受けないの」と言いたくなる気持ちと、「本人の意思も尊重したい」という思いのあいだで揺れる――そのモヤモヤは、ごく自然なものです。
「安全校を受けたくない」の裏にある、子供なりの理由

親から見ると、安全校を確保するのは当たり前の備えに思えます。けれど子供の側に立つと、その提案が少し違って届いていることがあります。
たとえば「行く気のない大学を受けるのは、なんだか志望校に失礼な気がする」という素朴な気持ち。あるいは「滑り止めを受ける=第一志望に落ちる前提で見られている」と感じて、傷ついている場合もあります。受験勉強の真っ最中、本人は第一志望に全力で向かおうとしているわけですから、「保険」の話が出ること自体に抵抗を覚えるのは、ある意味で前向きさの裏返しでもあります。
ここで大切なのは、「受けたくない」という言葉を、わがままや甘えと決めつけずに一度受けとめてみることです。その奥にどんな思いがあるのかを聞けると、話し合いの入り口が変わってきます。「どうして気が進まないの?」と、責める調子ではなく素直に尋ねてみる。それだけで、子供が本音を出しやすくなることがあります。
温度差は「正しさ」では埋まらない

親の「安全校は受けるべき」という考えは、多くの場合とても合理的です。それでも、正論をぶつけるほど子供が頑なになってしまう、という経験をされた方もいるのではないでしょうか。
受験期の子供は、自分の選択を自分で握りたい時期にあります。だからこそ、「親に決められた」という形になると、たとえ内容が正しくても反発が生まれやすいのです。逆に言えば、最終的に同じ結論にたどり着くとしても、「自分で考えて、自分で決めた」という感覚があるかどうかで、納得感は大きく変わります。
一つの方法として、親が結論を渡すのではなく、判断の材料を一緒に並べてみる、という関わり方があります。たとえば「合格の可能性をいくつかの段階で持っておくと、本番でどんな気持ちで臨めそうか」を一緒に想像してみる。安全校があることで、第一志望の入試当日に「ここが最後の砦」と気負わずに済む――そんな心理的なメリットは、子供自身が腑に落ちて初めて意味を持ちます。「受けなさい」ではなく「どう思う?」から始める。遠回りに見えて、実はいちばん早い道であることも少なくありません。
家庭で話す前に、親自身が整理しておきたいこと

話し合いがうまくいかないとき、実は親側の不安が先に立っていることもあります。「もし全部落ちたら」という心配が強いほど、つい言葉が急いてしまうものです。まずは親自身が、自分の不安と子供の意思を切り分けて見られると、対話の質が変わってきます。
整理しておきたいのは、たとえば次のような点です。譲れない条件は何か(浪人は避けたいのか、それとも本人が納得するなら選択肢に入るのか)。併願校の受験料や日程の負担はどこまで許容できるのか。そして、最終的な決定権を誰が持つのか。こうした「家庭としての前提」を親の側で先に言語化しておくと、子供と話すときに感情だけで押し合わずに済みます。
そのうえで、すべてを家庭の中だけで抱え込む必要はありません。親子だけだと、どうしても感情が絡んで冷静になりにくい話題でもあります。第三者の視点を一つ入れてみることも、有効な選択肢の一つです。勝つ塾でも、保護者面談で併願戦略のご相談をいただくことがよくあります。客観的なデータと、お子さん本人の希望、そしてご家庭の事情。その三つを一緒に整理するお手伝いができれば、温度差は少しずつ縮まっていきます。
まとめ:急がず、同じ方向を向くことから
安全校をめぐる親子の温度差は、どちらかが間違っているから生まれるものではありません。第一志望に全力で向かいたい子供と、その挑戦を支えるために備えを整えたい親。向いている方向は、本当は同じはずです。
だからこそ、結論を急ぐより前に、まずは互いの気持ちを言葉にしてみる。「受けてほしい理由」と「受けたくない理由」を、どちらも机に並べてみる。そこから始めれば、答えは少しずつ見えてきます。今は意見が食い違っていても、それは親子で受験に真剣に向き合っている証拠でもあります。焦らず、同じ側に立つところから、ゆっくり始めてみてください。
