「静かにして、が口ぐせになった夏」――受験生のきょうだいがいる家庭で、親が保ちたい3つのバランス

この記事は、受験生のお子さんと、その下や上に別のお子さんがいるご家庭のお父さん・お母さんに向けて書いています。「受験生を優先したいのに、下の子にばかり我慢をさせている気がする」「家じゅうが上の子の受験モードで、なんだか申し訳ない」――そんな後ろめたさを、この夏ふと感じたことはありませんか。受験は家族の一大事ですが、家の中には受験生以外の子もいて、その子にもその子の毎日があります。ここでは、きょうだいのいる家庭が受験期に抱えやすい揺らぎと、親が少しだけ意識しておきたい3つのバランスを、同じ立場で一緒に考えてみたいと思います。

「静かにして」が増えるほど、下の子は気配を消していく

「静かにして」が増えるほど、下の子は気配を消していく

受験生が家で勉強を始めると、どうしても「静かにして」「テレビの音を下げて」という言葉が増えていきます。これは家庭として自然なことですし、決して悪いことではありません。ただ、その言葉を毎日浴びているのが、まだ小さいきょうだいや、部活や学校で自分なりに頑張っている下の子だとしたら、少しだけ立ち止まってみる価値があります。

子どもは、家の空気をとても敏感に読み取ります。「今はお兄ちゃんが大事な時期なんだ」と察して、自分から音を立てないように、話しかけないように、気配を消していく子は少なくありません。それは一見「聞き分けのいい子」に見えますが、内側では「自分のことは後回しなんだ」という小さな寂しさが積もっていることもあります。我慢をさせている自覚がある親御さんほど、この構造に気づいていて、だからこそ苦しいのだと思います。

大切なのは、我慢をゼロにすることではありません。それは現実的ではないからです。むしろ「協力してくれてありがとう」と、下の子の我慢を”見えているよ”と言葉にして返してあげること。ほんの一言でも、「あなたのことも、ちゃんと見ている」というサインは、子どもの中に残っていきます。

比べるつもりがなくても、比べられていると感じる瞬間がある

比べるつもりがなくても、比べられていると感じる瞬間がある

受験期の家庭では、話題がどうしても受験生中心になりがちです。模試の結果、志望校、勉強時間――食卓の会話が上の子のことで埋まっていく。親としては当然の心配なのですが、その横で下の子が黙ってご飯を食べているとしたら、その子は「自分の話をする場所がない」と感じているかもしれません。

また、「お姉ちゃんはあの頃もっと頑張ってた」「あなたも来年はこうなるんだからね」といった言葉は、励ましのつもりでも、下の子にとっては”比較”として届いてしまうことがあります。親に比べる意図がなくても、子どもは自分がものさしを当てられていると感じるのです。反対に、受験生本人も「弟のほうが自由でいいな」と、下の子をうらやましく思っていることもあります。どちらの子も、静かに何かを抱えているという前提で見てあげると、家庭の空気は少しやわらかくなります。

ひとつの選択肢として、一日のうちほんの数分でいいので、下の子と「受験と関係のない話」をする時間を持つことをおすすめします。今日の学校のこと、好きなゲームのこと、なんでもかまいません。「あなたにはあなたの毎日があって、私はそれもちゃんと大事にしている」――そのメッセージが伝わるだけで、下の子の立ち位置はずいぶん変わります。

上の子の受験は、下の子の「予習」ではない

上の子の受験は、下の子の「予習」ではない

きょうだいがいる家庭で起こりやすいのが、上の子の受験経験を、そのまま下の子にあてはめてしまうことです。「お兄ちゃんはこの時期に部活を辞めた」「上の子はこの塾で伸びた」――一度うまくいった方法があると、親はどうしてもそれを”正解”として次の子にも渡したくなります。気持ちはとてもよくわかります。せっかく得た経験を活かしたいのは、親として自然なことだからです。

ただ、子どもは一人ひとり性格も得意分野も、心地よいペースも違います。上の子に効いた声かけが、下の子にはプレッシャーになることもありますし、上の子が伸びた環境が、下の子には合わないこともあります。「お兄ちゃんはできたのに」という言葉は、下の子にとって最も重い一言になりかねません。上の子の受験は貴重な”経験”ではありますが、下の子の受験の”台本”ではない、と少し距離を置いて考えてみると、親自身も楽になります。

そして、意外と見落とされがちなのが、下の子が「次は自分の番だ」というプレッシャーを、上の子の受験を間近で見て早くから抱えているケースです。まだ数年先のことなのに、家の緊張感を吸い込んでしまう。もし下の子がそんな様子を見せていたら、「あなたのときは、あなたのやり方で大丈夫だよ」と、先回りして安心を渡してあげてください。

まとめ――どの子にも「自分の場所がある」と感じてもらうために

受験生のきょうだいがいる家庭では、親のまなざしが一点に集中しやすくなります。それは愛情の裏返しであり、悪いことではありません。ただ、その集中の陰で、もう一人の子が静かに気を使っていることに、ときどき目を向けてあげてほしいのです。我慢を見えているよと返すこと、比較ではなくその子自身を見ること、上の子の経験を下の子の台本にしないこと――この3つを少し意識するだけで、家庭全体の空気は驚くほど変わります。

とはいえ、日々の生活の中で、すべてのバランスを親だけで完璧に取り続けるのは簡単ではありません。受験生の学習面を家庭の外に少し預けられると、その分、親御さんが下の子やきょうだいに向ける余白が生まれます。勝つ塾では、受験生一人ひとりの状況に合わせた個別指導に加えて、保護者面談を通じてご家庭全体の悩みにも一緒に向き合っています。ご家庭だけで抱え込まず、第三者の視点を入れることも、家族みんなが少し楽になるための一つの方法です。