「E判定だった」と聞いた夜――模試の結果が悪かった日、家の空気を守るための3つのふるまい
この記事は、模試の判定を見た子供が黙り込んでしまった日、あるいは「E判定だった」とだけ告げられて何と返せばいいか分からなくなった保護者の方に向けたものです。その日の夜、家の中でどう過ごすか。それだけで、次の一週間の子供の動き方はずいぶん変わります。
夏の終わりは、模試の結果がまとまって返ってくる時期です。夏休みにあれだけ勉強したのだから、と親も子も少し期待している。だからこそ、思ったほど伸びていなかったときの落ち込みは深くなります。「何と声をかけるのが正解なのか」と検索してこのページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。正解が一つだけあるわけではありませんが、その日の家の空気を壊さずに済む「ふるまい」なら、いくつかお伝えできます。
判定が悪かった日、家の中では何が起きているのか

まず知っておいていただきたいのは、結果を見た瞬間の子供の頭の中は、すでに十分うるさいということです。「夏休み、何をやっていたんだろう」「この時期でこの判定はまずいんじゃないか」「志望校、変えたほうがいいのかもしれない」。誰に言われるまでもなく、自分で自分を責める言葉が次々に出てきています。
そこに親からの言葉が加わると、子供にとってはそれが「答え合わせ」になってしまいます。「やっぱりお母さんもそう思っているんだ」と。親御さんとしては励ますつもりで言った一言でも、自己否定の真っ最中にいる子供の耳には、驚くほど厳しく届くことがあります。
一方で、親御さんの側も揺れています。心配、焦り、自分の関わり方への疑い。「もっと早く塾を変えるべきだったのでは」「あのとき口を出しておけば」。その揺れ自体は、子供のことを真剣に考えているからこそ生まれるもので、抑え込む必要はありません。ただ、それを子供の前でそのまま出すかどうかは、選べます。この「選べる」という感覚を持てるだけで、その日の過ごし方はだいぶ楽になります。
判定が悪かった日というのは、家の中に落胆が二人分ある日です。子供の分と、親御さんの分。この二つがぶつかると、話し合いのつもりが責め合いになりやすい。だからこそ、その日にやることを少し絞っておくという考え方があります。
ふるまい① その日は「結果の話をしない時間」を作る

結果が返ってきた日に、必ずしも結果の話をしなければいけないわけではありません。分析も、志望校の見直しも、翌日以降にできます。むしろ、落ち込みの最中に立てた計画は、たいてい現実的ではありません。「今日から毎日6時間やる」というような、翌週には破綻する約束が生まれがちです。
その日の夜は、いつも通りの食卓、いつも通りの会話でいい、という選択肢があります。「今日、駅前の店が新しくなってたよ」くらいの、どうでもいい話です。子供にとっては、家が「模試の話をしなくていい場所」であることが、そのまま安心につながります。
「触れないのは逃げているのでは」と感じる方もいらっしゃいますが、これは避けているのではなく、時間をずらしているだけです。数日おいて、子供の気持ちが少し落ち着いてから「そういえば、この前の模試どうだった?」と切り出すほうが、ずっと建設的な話になります。実際、返却当日より二、三日後のほうが、子供自身が冷静に自分の答案を見られるようになっているケースは多いです。
もし子供のほうから話してきたら、それはもちろん聞いてあげてください。ここでお伝えしているのは、親から話題を開かない、というだけのことです。
ふるまい② 原因探しより、「次の一手」を一緒に見る

数日たって話をするとき、つい「なぜ下がったのか」から入りたくなります。けれども原因探しは、どうしても過去に向かう会話になり、「夏休みの過ごし方が悪かった」という結論に着地しがちです。それは子供がすでに一人で通った道でもあります。
代わりに、目線を少し先に置く方法があります。「次の模試までに一つだけ変えるとしたら、何を変える?」という問いかけです。一つだけ、というのが大事なところで、あれもこれもと詰め込まないぶん、実行される確率が上がります。
このとき、答えを親が用意しないほうがうまくいくことが多いです。「英語の長文が時間切れになってる」「古文の単語が抜けてる」といった具体的な弱点は、答案を持っている本人がいちばん分かっています。親御さんの役割は、その言葉が出てくるまで待つことと、出てきたときに「なるほど、それは確かに大きそうだね」と受け止めることです。
もし子供が何も出てこないようであれば、そこは無理に引き出さなくて構いません。「まあ、また考えといて」で終わらせて、代わりに塾や学校の先生に相談してみる、という手もあります。ご家庭だけで抱え込まず、第三者の視点を入れることも一つの方法です。勝つ塾でも、模試の答案を一緒に見ながら次の一手を整理する時間を設けていますが、これは学習面というより、家庭内の役割分担を軽くする意味合いも大きいと感じています。
ふるまい③ 親の落胆は、顔に出す前に一度どこかへ置く
三つ目は、子供ではなく親御さん自身についてです。落胆を「隠す」のはかなり難しく、無理に明るく振る舞うと、かえって不自然さが伝わります。子供は親の表情の変化に驚くほど敏感です。
そこで、隠すのではなく「先に出しておく」という考え方があります。子供の前で受け止める前に、配偶者と話す、友人に聞いてもらう、あるいは紙に書き出す。どんな形でもいいので、自分の落胆を一度自分の外に置いてから、子供と向き合う。そうすると、子供の前で出てくる反応が、少しだけ穏やかになります。
「親が動揺してはいけない」ということではありません。親も人間ですから、判定を見れば動揺します。ただ、その動揺の一次処理を子供以外の場所で済ませておくと、子供に向ける言葉に余裕が生まれる、というだけのことです。
また、判定というのは、その時点でその問題を解いた結果にすぎません。夏に積んだものが数値に表れるまでには時間差があり、9月・10月の模試で急に形になることも珍しくありません。この時間差を知っているかどうかで、親御さんの受け止め方はずいぶん変わります。「まだ結果が出ていない」と「もう手遅れだ」は、まったく別のことです。
まとめ――その日の目標は「明日も普通に机に向かえること」
模試の判定が悪かった日、家庭の目標をどこに置くか。分析でも、計画の立て直しでも、志望校の再検討でもなく、「明日も普通に机に向かえること」に置いてみてください。それさえ守れれば、分析も計画も、あとからいくらでもできます。
そのために、その日は結果の話をしない時間を作る。数日おいてから、原因ではなく次の一手を一緒に見る。そして親御さん自身の落胆は、子供の前に出す前に一度どこかへ置く。この三つは、どれも特別なことではありませんが、判定に揺れた家の中では意外と難しいものです。
子供が受験を最後までやり切れるかどうかは、能力よりも「立て直せる回数」で決まる部分があります。そして立て直しは、たいてい家の中から始まります。落ち込んだ日に責められなかった、という記憶が、次の模試までの数週間を支えてくれます。うまくいかない日があること自体は、受験の予定に入っています。どうかご家庭でも、そのつもりで構えていてください。
