気づけば、私のほうが必死だった9月――受験が「親の戦い」になっていないか確かめる3つのサイン

模試の判定に、子供より先に自分が落ち込んでいた。志望校の話を切り出すのは、いつも自分のほうだった。――そんな心当たりのある保護者の方に向けた記事です。受験生を応援する気持ちが強いほど、いつのまにか親のほうが「当事者」になってしまうことがあります。それは愛情の裏返しであって、責められるようなことではありません。ただ、その状態が続くと、子供も親も少しずつ苦しくなっていきます。ここでは、受験が知らないうちに「親の戦い」になりかけているときに出やすい3つのサインと、そこから静かに戻っていくための考え方を整理します。

サイン1:子供より先に、自分のほうが落ち込んでいる

サイン1:子供より先に、自分のほうが落ち込んでいる

模試の結果が返ってきた日。子供は「まあ、こんなもんかな」と言ってご飯を食べているのに、親のほうが夜になっても引きずっている。判定の文字が頭から離れず、スマホで合格体験記を検索してしまう。こういう経験をされた方は、決して少なくありません。

本来、その結果に一番痛みを感じるのは受験する本人のはずです。それなのに親のほうが強く反応してしまうとき、そこには「自分が代わりに背負おう」という無意識の動きがあります。優しさから出ているものなので、本人にはなかなか自覚できません。

ただ、子供の側から見ると、景色が少し違って見えます。自分の結果で親が沈んでいる、という状況は、「結果を出さないと親を悲しませる」という新しいプレッシャーになりかねません。すると子供は、次から本当の点数を言わなくなる。悪い結果ほど隠すようになる。そうやって情報が入ってこなくなり、親はさらに不安になる、という循環が生まれます。

このサインに気づいたときに有効なのは、感情を消そうとすることではなく、感情の置き場所を子供の外に作ることです。配偶者に話す、紙に書き出す、信頼できる第三者に聞いてもらう。落ち込んでもいいのです。ただ、落ち込む場所を子供の目の前以外に持っておく。それだけで家の空気はずいぶん変わります。

サイン2:会話の主語が「うちの子」から「うち」に変わっている

サイン2:会話の主語が「うちの子」から「うち」に変わっている

「うちは今、英語が弱くて」「うちはまだ過去問に入れていなくて」。保護者同士の会話で、こうした言い方が自然に出てくることがあります。言葉づかいの問題と思われるかもしれませんが、主語は思っている以上に、心の立ち位置を映します。

「うちの子は英語が苦手」なら、苦手なのは子供で、親はそれを支える側にいます。「うちは英語が弱い」になると、親と子の境界が溶けて、親も一緒に戦っている構図になります。チームとして心強い面もある一方で、この状態が続くと、子供の成績が親の自己評価そのものになってしまいます。

そうなると、志望校を下げる相談ひとつにも、必要以上の重さが生まれます。子供にとっては現実的な選択肢の検討でも、親にとっては「自分たちの敗北」に感じられてしまう。本来は一緒に考えればいいだけの話が、譲れない交渉になっていきます。

気づいたときは、心の中でいいので主語を戻してみてください。「この受験を受けるのは、私ではなく子供だ」。冷たく突き放すという意味ではありません。応援する人と、挑む人は別の役割なのだと確認するだけです。距離を取り戻したほうが、かえって長く支えられます。

サイン3:子供の予定を、自分の予定として管理している

サイン3:子供の予定を、自分の予定として管理している

模試の申込、出願スケジュール、オープンキャンパスの予約、参考書の買い足し。気づけば受験に関わるほとんどのタスクを親が把握し、親が前倒しで動いている。――これも、よくある状態です。特に共働きで時間が限られているご家庭ほど、「自分がやったほうが早い」という判断は合理的ですし、実際それで回っている部分もあります。

ただ、ここで一度立ち止まりたいのは、親が管理を引き受けるほど、子供が自分の受験を「自分ごと」として持ちにくくなるという点です。締切を気にしなくても誰かが教えてくれる状態が続けば、当事者意識は育ちにくくなります。そして皮肉なことに、当事者意識が薄い子ほど、親は「うちの子は他人事みたい」と苛立ってしまう。原因と結果が絡まっていきます。

とはいえ、すべてを本人任せにすれば出願を逃す、という現実的な心配もあります。そこで、線を引く場所を決めておくという方法があります。たとえば「期日の共有と最終確認は親がする。ただし、申し込みボタンは本人が押す」「進路の情報は集めて渡すが、選ぶのは本人」。全部か、ゼロか、ではなく、どこまで手を貸すかを家庭ごとに決めておく。その線が明確なほど、親も迷わずに済みます。

まとめ:一番の応援は、隣に立ち続けること

受験が「親の戦い」になってしまうのは、親が間違っているからではありません。むしろ、子供の人生を真剣に考えているからこそ起きることです。その気持ちごと否定する必要はまったくありません。

ただ、向かい合って引っ張る位置ではなく、隣に立って伴走する位置に戻れたとき、子供は自分の足で進みやすくなります。今回の3つのサイン――先に落ち込んでいないか、主語が溶けていないか、管理を抱えすぎていないか――は、そのための確認ポイントとして使っていただければと思います。どれか当てはまったとしても、それは失敗ではなく、真剣に向き合ってきた証だと考えていただいて大丈夫です。

そして、家庭の中だけで距離を調整しようとすると、どうしても難しい場面があります。勉強の進捗や志望校の話を第三者が引き受けるだけで、親子の会話から緊張が抜けることは珍しくありません。勝つ塾では保護者面談を通じて、ご家庭ごとの関わり方についてもご相談を伺っています。抱え込まずに、外の視点を一つ入れてみることも選択肢の一つです。